映画「古都」(2016)あらすじ,ネタバレ,レビュー
©川端康成記念會/古都プロジェクト
原題:
邦題:
原題訳:
製作年:
製作国:
上映時間:
ジャンル:
監督:
主演:
あらすじ
この映画にはtoikun以外のレビューはまだありません。
生き別れになり20数年が過ぎた姉妹、佐田千重子と中田苗子。同じ京都に住みお互いのかつての住所を知っている2人だが、会おうとしないのは“住所が変わっているかもしれないから、会えないかも”という単純なものではないようだ。
伝統のある呉服店に養女として引き取られた千重子と北山杉の里で夫と林業を営む苗子。2人にはそれぞれ舞と結衣という娘がおり、舞は日本の大学に通い就職活動の時期に差し掛かっていた。結衣は画家になろうという夢を実現させるためにパリへと留学をしている。
引き取られ、育てられた恩に報いるために自分を殺し夫と呉服店の発展のために尽くしてきた千重子は、舞にもそうするように望んでしまう。そして、いずれ稼業を継ぐための経験をさせるために受けた会社の面接で失敗した舞を、“家族”に頼み合格させた千重子。舞はそれを知り母を拒絶してしまう。
一方の結衣は留学を賛成されてパリへ渡り、多くの友人も出来て好きな絵を描いていたつもりだったが、突然“夢”が見えなくなりキャンバスを切り刻んでしまう。
娘の苦悩を知った千重子と苗子の選択とは…!?
京都とパリ、それぞれ素晴らしい伝統のある古都に住む舞と結衣。お互いの存在を知らなかった2人が、それぞれの母親に“生き別れ”の話しを聞かされる。
そして日本の伝統文化の紹介のために千重子はパリを訪れることになる…。
日本人として初めてノーベル文学賞を受賞した川端康成の傑作小説『古都』の3度目の映画化。1963年に岩下志麻主演で、1980年には山口百恵主演(彼女の引退作品)で映画化されている。両作品とも未見だが、本作が過去の2作品と大きく違うことが資料に書かれていた。
それは、原作の“その後”が描かれる“現代版”であると言う事。だから今までの作品を覚えている方や、原作小説を覚えている方も新たな発見が出来る映画となっている。
監督を務めるのは、ハリウッドで8年間映画を学び、2006年に帰国後、「バベル」や「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(「レヴェナント:蘇えりし者」でのクレジットはアレハンドロ・G・イニャリトゥ)のもとでハリウッドと日本の架け橋となったYuki Saitoだ。映画のみならずCMやミュージック・ビデオの世界でも活躍するSaito監督が描く新たな『古都』。
京都府や京都市が後援という事もあるからなのか、それでも違和感なく劇中では様々な伝統文化にフォーカスがあたるので、ニュアンスとして“美術館巡りが体験できる映画”的な楽しみもある。使われる京都弁にも、地元民ではないが違和感を感じず心地よくなった。
エンディング曲は中島みゆき作詞・作曲で新鋭シンガーソングライターの新山詩織(オフィシャルサイト)の歌う『糸』。一節を紹介する。
“縦の糸はあなた、横の糸はわたし”、これを聞いて映画の半分くらいから涙ながらに観ていたのに更に激しく涙が出てしまった。この点については下のレビュー欄で記載する。
最後に、千重子の養父を演じた奥田瑛二のこんなセリフを紹介し、この欄を占めたいと思う。
“喧嘩できるのは、親子の印や”
11月26日(土)より京都先行上映、翌週12月3日(土)より全国公開。
公式サイトには松雪泰子、橋本愛、成海璃子、そしてYuki Saito監督の興味深いコメントが紹介されているのでドウゾ。そして公開される劇場の一覧と公開日が記載されているので最寄りの劇場を探すのにも、利用してみて下さい。
配給:DLE
感想・レビューを書いてみませんか?投稿フォームはコチラ[下にあります]
北山杉の郷で働く妹、中田苗子
(一人二役)
北山杉の郷で働く妹、中田苗子
(一人二役)
ストーリー・ネタバレ
京都に住む双子の姉妹、千重子と苗子。千重子が伝統のある佐田呉服店の主人、佐田太吉郎に養女として引き取られてから会えない日々が続いた2人だが街中で偶然再会する。
父も母も苗さんのことを娘として迎えてもいいと言っている
と話した千重子だが、
あきません。うちは千重子さんに会えてそれだけで幸せです
と断られてしまった。その後、千重子が佐田呉服店の帯を苗子に手渡すと、それ以来、姉妹は会うことはなかった、同じ京都に住んでいるのに…。
現在の京都。
自分を養女として引き取ってくれた父の佐田太吉郎への恩義や、伝統のある佐田呉服店への“忠誠”もあり、婿としてこの家にやって来た夫の竜助とともに佐田呉服店を切り盛りする千重子。2人の間には大学生の娘、舞がおり、彼女は就職活動の時期に差し掛かっていた。今、舞が受けようとしている会社は、室町商事という佐田呉服店とはゆかりの深い商事会社。一族の人間が、呉服店を継ぐための経験を得てきた会社である。
千重子はモチロン娘の将来が大きな心配事であるのだが、呉服店を巡る状況もまた千重子、そして夫の竜助を悩ませていた。その“状況”とは、不動産業者が町家に入る人々に少々強引にマンション建設を薦めており、さっきもまた、取引のある織物職人が佐田呉服店に廃業の挨拶にやって来たのだった。これでまたこの街に響く織機の音が一つ消えた…。
ある晩、千重子は悪い夢を見て目が覚めた。隣で寝ていた竜助も心配をするのだが、朝には何時もの様に家の前に立ち、行き交う勤め人に“おはようございます”と明るく挨拶をする千重子がいた。
外での日課が終わると、次は家の中での日課だ。夫の竜助に“おはよう”と声を掛け、仏間に向かい手を合わせる。そして今日は娘の舞に書道お稽古があるので彼女に忘れない様に伝えた。また日課と言う程の頻繁さはないが、養父の太吉郎への手紙を舞に持たせると、お稽古の後に届ける様に頼んだ。
鏡に向かい明るい和服に着替えると、また取引先の男性が訪ねてきた。今月いっぱいで店を畳むそうだ。“展示会には寄らせて頂きます”と言って帰っていった男性。家を飛び出した千重子は、男性が見えなくなるまで深く、深くお辞儀をしていた…。
京都の北山杉の郷で、夫と共に林業で生計を立てている苗子。苗子と夫との間にも、千恵子の娘、舞と同い年ぐらいの娘、結衣がいる。千恵子と苗子はあれ以来会ってはいないので、お互いに娘がいることは知らない。結衣はパリへ留学して絵画を学んでいるのだが、近所の人に
鳶が鷹を生んだねぇ。この街の宝や。
なんて無神経な言葉をかけられても嫌な顔一つしない苗子にとって、娘の結衣は本当に誇るべき娘なのだ。
フランス、パリ。授業中に絵を褒められた結衣。しかし先生は褒めた後で少しだけ苦言を呈した。授業後、友人と歩く結衣はこう聞かれた。
日本にいた時は何を書いていた?
結衣はこの問いに答えることが出来なかった。
帰宅後にパソコン画面で京都の母、苗子と会話をする結衣だが少しだけ話をすると、
忙しいから、もう切るね。
と言って切ってしまう。キャンバスに向かい描こうとするが、直ぐに集中力が切れてベッドに横たわる結衣。この時、日本の苗子は大事にとっておいた娘が昔描いた絵を引っ張り出していた、寂しそうな顔をしながら…。
書道のお稽古中の舞。お手本の様に綺麗な字を書く舞を褒め称える他の生徒たち。この時、書道の先生がこう舞に話しかけていた。
舞ちゃん、ちょっといい?私と一緒にパリに行ってくれる?舞ちゃんは日本舞踊も出来るし。
[ストーリーは導入のみ]
・室町商事の面接を受けた舞だが、聞かれたことに答えることが出来なかった
・しかし母、千恵子が渡した合否の手紙には…
・一人パリで苦悩する結衣の元へ、母の苗子が…
・パリに書道の先生と同行することの決心がつかない舞だが…
・本気に喧嘩をしてしまった千恵子と舞、方々へ走り頭を下げる千恵子は娘を思ってか?それとも佐田呉服店を?
・一人二役をこなす松雪泰子の仕草が正に京都!
・日本の伝統文化、京都の伝統文化が映画を彩ってます
・京都の伝統的な呉服店が一つの舞台だが、“この問題”は日本全国の誰にでも当てはまるので、十分に感情移入できる
本作は、上質な親子の人間ドラマに仕上がっている
・中島みゆき作詞・作曲、新山詩織が歌う『糸』に崩壊していた涙腺が更に…
まだ9月で公開までは約2ヶ月あります。もう少ししたら試写会の募集が各サイトさんで出てくると思うので、ウズウズしている方は応募してみて下さいね。このページやTwitterでも本作に関しての最新情報を記述するので、楽しみに待っていて下さい!
繰り返しになりますが、公式サイトにあるキャストと監督のコメントはとても興味深いのでご覧になってみて下さいネ!
ギャラリーはココまで。
レビュー・感想・解説・評価
感想・レビューを書いてみませんか?投稿フォームはコチラ[下にあります]リンクについて
~~~(矢印と破下線のリンク)は、T's Theaterでレビューしている映画作品や紹介している俳優等、全て内部リンクです。
この欄の最後に、エンディング曲『糸』の歌詞を拡大解釈して映画とは関係ない方向に飛んでいくのでヨロシクです、反物を作る織機についてです。
はい。
本年6月15日の新聞紙面で驚いた方も多いでしょう、そう、松雪泰子が2役、それも山口百恵の引退作品である「古都」の再映画化作品で。それが本年11月26日に京都で先行上映されて、12月3日より全国公開される本作です!
川端康成の『古都』を元に“新たな古都”を誕生させたのが「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥとも深い関係のあるYuki Saito監督。Saito監督自身が脚色…と言うより“その後”と言う事で、新しい脚本を書いている。
キャストを。
・双子の姉千恵子と妹の苗子を演じるのは映画やテレビドラマに引っ張りだこの人気抜群、実力は底知れない松雪泰子。最近はCMでタモリやトミー・リー・ジョーンズと共演して微笑ましかった。テレビドラマ『家族狩り』ではゴメンなさい、初見で松雪さんが犯人だと思ってしまいました、騙された。他に映画「容疑者Xの献身」など出演作品は多数。
・千恵子の娘、舞を演じるのは「さよならドビュッシー」や「桐島、部活やめるってよ」などの橋本愛。本作では書道で上手な字を書いて、日本舞踊を大勢の前で披露!
・苗子の娘で本編中ではずっとパリのシーンという結衣に扮したのは「あしたの私のつくり方」、「武士道シックスティーン」などの成海璃子。橋本愛が、古都京都の文化を披露するのに対比して、成海璃子が、絵画は『古都パリ…』と限定できるものではないが、他にパリらしい(?)露天の野菜販売店や大学構内を案内=披露する。彼女が喋っているのは見事なフランス語ですよ!
・竜助というキャラクターが最も人間臭いキャラだったのではないか、佐田家に婿に入る竜助に扮するは伊原剛志。本年は「超高速!参勤交代 リターンズ」が公開。近年ではテレビドラマ『医師たちの恋愛事情』がツボにハマったtoikun。浮気をする医師が多い中(伊原演じる医師が浮気したのは、家庭環境から言って、それ程には責められないと思う)で主人公を演じた斎藤工は“真面目な先生”だったし。
・千恵子の養父を演じるのは奥田瑛二。“そのご尊顔もあり”なんて言ってしまうと失礼になるが、奥田が出ると作品がギュギュギュッと締まるのが素晴らしい。でも何かの作品でだらしない役(飲んだくれ??)を観たら、ギャップを感じてよかった。余り出演シーンは多くはないので目に焼き付けて下さい!
・そして、過去の回想シーンで若い千恵子と苗子を演じるのは、それぞれ、蒼れいなと蒼あんな。これからが期待の双子女優だ。彼女たちが、どうアイデンティティーを育てていくか見守っていきたい。
さて。
映画として、“文化紹介シーン”には観る人によっては大きく評価が分かれるかなと思った。“羅列”ととられなくもない。ただ千恵子は和食を作る。野菜を洗うシーンだったかで“和食という日本文化も細かに映すの?”と思いかけた時に、娘の舞が手を貸したので、“親子ドラマ”に持っていってくれて有難かった。
劇中の後半、“京都とパリが直結”する演出・シーンがある。これは是非劇場で観て欲しいのでこれ以上は言いません☆
この映画、親子で映画を観る程の仲にはない、親子関係に何かがある人に特にオススメしたい。何かの偶然で親子が別々に本作を観ればベストだが、親、もしくは子どもしか観られなくても、観た方が、相手へのプラスの思いが必ず出てくるから。ラブラブな親子さんは、もちろん更にラブラブに。
そしてストーリー欄に書いた奥田瑛二のセリフ“喧嘩できるのは、親子の印や”、あなたは何を感じる事が出来るでしょうか?
他にもとても印象的なセリフがあったので、お聞き逃しのないようお気を付け下さい。公開まであと2ヶ月です!
以下、楽曲『糸』の歌詞、“縦の糸はあなた、横の糸はわたし”の勝手な拡大解釈と織物に関して。
栃木県足利市には“織物会館”と言うのがある程、かつては繊維業で賑わい多くの個人経営の機織り職人がいた。約25年程前の織物をしていたとあるお宅の話。
機織りって文字通り動力を用いて縦糸と横糸を組み合わせて布にしていく。テレビでよく観たりするのは動力を使わない手織り。本作ではそれ程スポットは当たらなかったものの、織機が映っている。どこの地域が手織りで、機織りかは知らない。
このお宅では、業者から作って貰いたい模様通りに縦糸が並んでいて、布にするために縦糸は長いので、ボール紙と呼ばれるもので糸通しが絡まない様に何重にもクルックルとなったモノを仕入れていた。で、仕入れたコレをそのままでは織機にはかけられない。1本1本、織機に固定して使用する“別になっている”道具に糸を通さなければならない。機織りと言ってもこれだけは100%手作業で、外注をしていた。
で、その道具にひっついた縦糸たちを織機にかける。そうすると隣同士の糸は上下反対になっているので、その間を横糸を通せば良い。だが、横糸に関しても若干の作業が必要なのだ。シャットルと呼ばれるモノに細長いボビンに巻いた糸を装着しなければならない。ボビン(と言うかは名前は忘れた)に糸をクルクル巻いていく機械はある。キチンとシャットルに収まる太さで糸が巻かれていくのだ。そしてそのボビンをシャットルにセットして横の穴から糸を出せば準備完了。
シャットルを織機にセットしてスイッチを入れれば、人間がシャットルを左右に動かす手織りと同様に、自動でシャットルが右に左に弾かれて横糸が縦糸の中に入っていき、シャットルがひとたび端に行けば、縦糸の隣り合っている上下が逆になるので反物になるのだ。
ただ、当時の織機、勢いよくシャットルを弾くものだから偶に収まらずに飛んでっちゃうのだ。その高さ、小学校1年生の目線に等しかった、このお宅では。悪いコトに、このお宅のシャットルは、金属の円錐が上下の端に付いている構造と思って欲しい。織機の両端でシャットルを受けとめるロウで出来た部品があるのだが、新品には穴がないのに、シャットルがあたるうちにロウが削れて円錐と同じ形の穴が出来ていくのだ。それ位、強く弾く。当然、壁間際の織機の場合、壁に弾くと傷が出来る。何十年ものの傷かは知らないが、無数のシャットルの傷が壁にはあった。
“縦の糸はあなた、横の糸はわたし”
シャットルは丸でロケットガール、ロケットボーイであり、1つのシャットルに収められる糸の量というのは限られるので、またボビンを代えて織り出すのだ。“1つの反物を織るのに、私は何人も必要or色んな私がいる、時々アナタの思い通りにはならない”、こう経験者なりの歌詞解釈を帰った後でしてみて楽しく、非常に懐かしかった。
もう廃業したけどtoikunの実家のこと。本作に登場するような着物に使われる明るい色の反物を織っているのは見たことはない。大体、藍色や黒っぽい感じ。だがしかし最後の反物は実家に保存してある。
“誇り”を織ってきたあなた方、本当に感謝します。ありがとう。
2016/09/18
by toikun.
『映画ファン』さんのレビュー・評価
投稿日時:20??/??/?? 15:59:46
4点/10点満点中★★★★☆☆☆☆☆☆
ホームページ
コメント:
(コメントをどうぞ。)
T's Theaterへのお問い合わせフォームはコチラ(別ページで開きます)