映画「人間の値打ち」あらすじ,ネタバレ,レビュー
(C)2013 Indiana Production Company Srl / Manny Film
原題:
邦題:
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あらすじ
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夜。自転車で帰宅途中に車に轢逃げされた男。容疑者は救護措置をとらずに逃走し、男は重体で病院に運び込まれた。
車に傷が付いていたことから警察に疑いをかけられる上流階級の青年マッシ。マッシと事件当時一緒にいたとされた彼女のセレーナは、マッシを庇っているのか友達である兄弟のどちらかが運転していたと警察に語る。
マッシの父親は40%~50%の高利回りをうたう投資会社の社長ジョヴァンニ。セレーナの父親ディーノは余りうまくいっていないものの不動産会社を経営しており、ジョヴァンニの高利回り投資を耳にして、家を抵当に入れて借金をし、ジョヴァンニに近づいて、その借金で手に入れた70万ユーロ(2016年9月15日のレートで約8000万円)の投資契約をしていたのだ。
だがジョヴァンニの投資会社の予想が外れて90%もの損失になることが分かるディーノ。
そして上流階級らしくジョヴァンニの妻カルラは贅沢と自己満足のために劇場再建を約束していたのだが、会社に余裕がなくなりそれも叶わなくなってしまう。
上流・中流階級の家庭が抱えることになった資金問題とひき逃げ事件が思わぬ方向に転がっていく…それは下流階級の家庭も巻き込んで…。
2013年製作のイタリア映画。イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で7部門に輝いた!
原作はスティーヴン・アミドン(Stephen Amidon)の小説『Human Capital』であり2016年9月現在、日本語訳はされていない。(英語版だがコチラの日本Amazonで購入は可能。)
監督のパオロ・ヴィルズィは『Human Capital』について“傑作小説に出会い、すっかり心を奪われたことから、この映画の発想を得た”と語っている。同小説はアメリカ・コネティカットが舞台と言うが、映画はそれをイタリアに置き換えている。
演じる俳優陣は名門と言われるブルーニ家出身のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞主演女優賞受賞)をはじめ、ファブリツィオ・ベンティボリオ(同賞主演男優賞ノミネート)、ファブリツィオ・ジフーニ(同賞助演男優賞受賞)、ヴァレリア・ゴリノ(同賞助演女優賞受賞)など。(括弧内の受賞・ノミネートは本作によるもの)
アメリカ・ヴァラエティ紙曰く、“巧妙でスタイリッシュな社会派サスペンス”。そんなサスペンス映画の犯人探し以上にスリリングでドロドロの各階級を超えた関係が描かれ寧ろそちらが映画の中心。
原題の『IL CAPITALE UMANO』、意味は“人間の値打ち”だがラストに現れるその説明を観たときゾワゾワと来るので、意味でモヤモヤしている方は調べずに劇場で知って欲しい。
10月8日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開。公式サイトに公開劇場一覧へのリンクがあるのでご参照を。また主要登場人物たちの顔写真付き紹介があるので本作を観る前に予習しておくと“飲み込みやすい”ゾ。
ブロードメディア・スタジオとの共同配給映画「エル・クラン」に引き続き、個性的&超良作品なシンカ配給映画だ!
なお、シンカ配給作品「フィッシュマンの涙」が12月17日より公開予定であり、後の予定を述べるとtoikunのスケジュールが転けがちなので痛いのだが、同作は17日~23日の週に記事をアップ出来たらと思っている。カンヌ国際映画祭の短編部門パルムドールを受賞したクォン・オグァン監督・脚本の作品なので非常に楽しみにしているtoikunでした☆
配給:シンカ
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ストーリー・ネタバレ
クリスマス・イブ前夜のイタリア・ミラノ郊外。コッタフィーヴィ賞2010授賞式を終えたグレゴリウス高校。一番優秀な成績をあげた生徒を表彰するこの賞。ウェイターとして働いていていた男は、出勤が1時間早かったからと1時間早く退勤した。ヘルメットを被り自転車に乗って帰宅の途につく。走っていると、後方から車がスピードを上げてやって来た。この時、前からも車がやって来て、後ろの車は急ハンドルを切り男の自転車にぶつかり、男は道路から転げ落ちた。ぶつかった車は救護措置をとらずに走り去った。男にとっての“1時間早い出勤”が結果的に男の命を縮めることになろうとは…。
第1章:ディーノ
この事故の半年前。投資会社を経営するジョヴァンニ・ベルナスキの豪華な屋敷を訪ねたのはディーノ・オッソラ。小さいながら自身の名をつけたオッソラ不動産を経営する中流階級の男だ。娘セレーナを彼女の彼氏であるこの家のマッシミリアーノのところへ送り届けに来たのだ。ジョヴァンニが彼らの仲間とテニスに興じていたので、ディーノも混ざることになり、ジョヴァンニと組んでダブルスの試合をした。ディーノのサービスが良く彼らは勝利。テニス後にジョヴァンニの友人に噂で耳にしていたことを尋ねるディーノ。
ベルナスキ・ファンドは利率が40~50%は本当か?
家と棺は万人が必要だと言うが、金ならば万人に必要な金額は、1つの近しい金額に集約するのだろうか?
この事を聞いたディーノ。ジョヴァンニはディーノの顔から読み取り“ファンドに入りたいのか?”と聞いた。最低50万ユーロが必要だという。
ディーノは、友人の銀行勤めの男ジャンピの元を訪ね、70万ユーロの融資をして欲しいと頼んだ。その担保は娘セレーナの名義にしてある家だった。
帰宅したディーノ。彼を出迎えたのは彼の二番目の妻ロベルタ。高校生を対象にしている心療内科医である。ディーノが最初の妻、つまりセレーナの母親と別れたのは彼の浮気が理由…。セレーナはロベルタのことを家族として受け容れている。このロベルタが妊娠したことを告げた。
そしてジョヴァンニと会うことになっていた木曜。彼の会社を訪ねるディーノだが、生憎ジョヴァンニは会議中で、彼の部下と出資についての話をする。そして規約を聞かされるが、それに反しているのに、偽って契約書にサインをするディーノ。ジョヴァンニは30分後にフライトがあると、ディーノとの時間を作ろうとはしなかった。
半年後。自身の店舗で顧客のエステルと話すディーノ。彼女は“滅多にない話”と言うが今のディーノはそんな事には興味がない。普通ではあり得ない利率のファンドに投資をしているのだから。その後、娘セレーナが通うグレゴリウス高校のコッタフィーヴィ賞授賞式に参加するためにやって来たディーノ。駐車場に車を止めると、車の中で泣いているジョヴァンニの妻カルラの姿を目にする。中流階級のディーノが上流階級であるジョヴァンニと同じテーブルについた。ここでジョヴァンニにこう言われるディーノ。
近々、家に来てくれ
一体何のことであろうか?その後、妊娠中のロベルタが気持ち悪いと言い出したので、彼女を病院に連れて行くために席を立ったディーノ。AM1時、病院の診察を終え、ロベルタの身体に問題がないことが分かり、帰宅しようと外に出ると、救急車が来ており、病院にストレッチャーで運ばれる男とすれ違った…。
そして約束していた日にディーノがベルナスキ家を訪ねた。またテニスをするものと思っていたディーノだがテニスコートには誰もいない。屋敷の方に行くと、ジョヴァンニが仲間と共に会議中だった。窓を叩きジョヴァンニを呼び出したディーノ。ディーノがくることさえ忘れていたジョヴァンニ、その理由を話した。
下落にかけてた予想が外れた。出資金の内、90%の損になる。
と告げ、再び会議の席へ戻った。
70万ユーロが7万ユーロに…。
それが頭をよぎったディーノは再び会議中の部屋に入りジョヴァンニを呼んだ。そして彼にこう告げた。
出資額をジョヴァンニの自腹で全額返して欲しい。銀行から借りた金だ。
ジョヴァンニはこう言い放った。
詐欺だぞ!
そう契約書には“出資金額は総資産の20%以内とすること”と書かれていたが、サインするときにディーノは偽ったのだ。
7万ユーロを解約して返す。
と言ったジョヴァンニ。ディーノは帰り道、刑事が捜査を行っているひき逃げの現場を通りがかった。そして帰宅したディーノ。産休に入ると告げるロベルタだが心はここにはないディーノは空返事をする。水を一気飲みするディーノを心配になるロベルタだった。そして家にいたセレーナはマッシの家に行くと外に出る。この時、セレーナを訪ねて警察がやって来た。頭を抱えるディーノがいた…。
第2章:カルラ
時は事故の半年前。投資会社を経営し富豪のジョヴァンニ・ベルナスキを夫に持つカルラ。お抱え運転手が運転する高級車の後部座席に座り街へと出かけるカルラ。予定していた事から直ぐに興味はそれて、クロゼッティ古美術店を訪れて像を買ってしまう。そしてまた車で移動すると今度は街の伝統ある劇場、ポリテアマ劇場へと差し掛かった。工事中の劇場、支配人の男から、劇場を壊して再開発の計画があると告げられたカルラ。家に戻ると、劇場を修理してしかも公演を行うという財団設立の考えを夫ジョヴァンニに伝え、出資を求めた。ジョヴァンニはこれを了承した。
早速、ベルナスキ邸でカルラが集めた財団のメンバーとなる人物たちと会議が開かれた。その中には芸術監督のドナートがおり、彼の手腕を知っているカルラは演劇脚本の執筆を依頼した。元役者であるカルラをよく知っていたドナートは、当時の彼女の演技を思い出し賞賛の言葉を並べた。
半年後。辺りは雪景色だ。ジョギング後に家に戻ったカルラに対し、夫ジョヴァンニはコッタフィーヴィ賞授賞式でディーノと一緒にテーブルを囲むのが嫌だと言った。半年前からこれまで一見仲良くテニスをしていたジョヴァンニとディーノ。ディーノはベルナスキ・ファンドに70万ドルも出資してくれたのに…。この時、ドナートからカルラへ電話があったが、彼女にファンドの運用失敗を打ち明け、資金を得るために劇場の改修工事を止めてマンションにすると告げた。
コッタフィーヴィ賞授賞式に出席せねばとグレゴリウス高校へとやって来たカルラだが車の中で泣いてしまう。この時、外をディーノが通りがかかり彼女が泣いているのを目撃した。
ディーノが身重の妻の体調不良を案じて会場を去った後、コッタフィーヴィ賞の発表まで残り3人となった。候補者としてマッシが呼ばれる。そして2010年の最優秀賞の発表、マッシは受賞を逃した。受賞したのが黒人の女生徒だったことに、ジョヴァンニが差別用語を口にしたのは、彼が上流階級にあるからか、それともファンドにこれまでにない危機が訪れていることで…!?
ベルナスキ邸には、今、カルラしかいない。彼女は、昔の映画DVDを見つけたと連絡してきた芸術監督ドナートを他には誰もいない家に招いた。とても官能的な映画がスクリーンに映されると、やがて2人は身体を重ねる…。
だが途中で人の気配に気付いたカルラ。映画を止めてカルラが上階へと行くと、息子マッシが酒に酔って帰宅してベッドに寝ていた。カルラは息子に気付かれない様にドナートを帰そう一緒に外に出た。そしてキスを交わすとドナートはこの場を後にした…。
[第2章は途中まで]
この後、ドナートの家を訪ねるカルラは、劇場を再建できないことを告白すると…。
第3章:セレーナ
半年前のセレーナは彼氏のマッシに別れを告げた。しかし未練タップリのマッシにより、つかず離れずの関係が続く…。
そんなセレーナが出会ったのは、大麻を500グラムも所持していたとして逮捕され、心療内科にかかっている青年ルカに出会う。複雑なルカの家庭環境。父母はおらず、ルカを育てるのは彼の母の弟、つまり叔父…。叔父はルカの母親の保険金を使ってルカを育てる…。
程なくして惹かれ合うセレーナとルカ…。
[第3章は途中まで]
そして、最終章。
最終章:人間の値打ち
ひき逃げ事件の犯人とは?
・歴然とした差のある階級、それでも“上”へと目指す人間の執念
・差別用語が吐かれるが、その演出の意味は…
・結末に納得するかは人によるが、エンドロール中に流される曲はアナタを癒す
(ハリウッド映画で表現すると、トマス・ニューマンのポコポコポコという音楽と、時代劇の虚無僧の様な笛の音が混ざり、静かなオーケストラが重なる…。)
少し古い映画だが、発掘して買い付けたチームに素直に“ありがとう”と言いたくなる快作。劇場の大きなスクリーンで是非ご覧頂きたい。迷っている方、公式サイトを隅々までご覧になれば、映画を観て“自分の値打ち”を計たくなるゾ!
10月8日より公開。9月16日時点で、全国26の劇場で公開予定。
Don't Miss it.
レビュー・感想・解説・評価
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イタリア・アカデミー賞で7部門を受賞しながら今まで日本に上陸することのなかった作品がこの秋とうとう日本のスクリーンで映える…。
スティーヴン・アミドンのアメリカを舞台にした原作に感銘を受けたパオロ・ヴィルズィ監督が、2人の脚本家と共に脚色をした本作は“ラグジュアリー・サスペンス”の名を背負う。
映画音楽担当のカルロ・ヴィルズィはパオロ・ヴィルズィ監督の弟で、兄が監督する映画の音楽を多数担当しているという。
キャストについて詳しく説明できる程、知識がないので一番分かりやすい公式サイトを掲げておく。
ただ主要登場人物である2組の家族を演じた6人は皆、それぞれの役割を果たしていて、月並みな表現だが素晴らしかった!
さて。
人種差別用語が出てきたことで、“無理な多様性”があるのかと勘ぐってみた。本年6月に公開されたドイツ映画「帰ってきたヒトラー」でも同様な表現が出てきた。それはヒトラーのユダヤ人に対するものだけでなく、白人の黒人へのそれ。近年リバイバル上映された1992年と少し古いフランス映画「ありふれた事件」を今年観て“慣れっこ”になったが。
まぁこれは“付け合わせ”程度なので深くお気になさらずに。
メインディッシュ。魚のために作られたソースを肉につけてみる。ソースは絡めることは出来るが料理に合わない。でも、もしかしたら蒸し鶏の為に作られた調味料なら、焼いた鶏肉に使用しても美味しいかもしれない。ただお皿の上に乗っかった魚を、肉料理のお皿へ載せることは邪道…。
すっごい抽象的なことを思いついたから、そのまんま記述をしてみた。自己満足。
人によってはすごい悩んじゃって考え込んじゃう、そんな人の比率は多いだろうなと感じる、非常に良質な映画作品…と締めくくろう。
2016/09/16
by toikun.
『映画ファン』さんのレビュー・評価
投稿日時:20??/??/?? 15:59:46
4点/10点満点中★★★★☆☆☆☆☆☆
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